椎間板ヘルニア時の入浴は「有り」か「無し」かの私の見解
椎間板ヘルニアとは、首や腰にある椎間板(背骨と背骨の間にあるクッションのような構造)の中心部「髄核(ずいかく)」が飛び出し、神経を圧迫することで起こる病気です。
この圧迫により、腕や脚に痺れや痛みが生じることがあります。
今回は、椎間板ヘルニアの症状の重さや病期に応じて、入浴が可能かどうかについて、私の見解を丁寧にお伝えしていきます。
ヘルニアの「重症度」とは?
椎間板ヘルニアと一言で言っても、その症状や影響の度合いには大きな差があります。
大きく分けて「軽症」「中等度」「重症」の3段階に分類されます。
軽症
MRI検査などで髄核の脱出が確認されたとしても、腕や脚にほとんど痺れや痛みを感じない状態です。
主に腰や首の違和感、軽度の痛みのみが見られます。
中等度
この段階になると、痺れや痛みが腕や手、脚、お尻などに広がり、日常生活に支障が出るようになります。
たとえば、手で物を取りづらくなったり、歩行時に脚やお尻が痛んで前に出しづらくなるなどの症状が現れます。
重症
重症になると、痛みや痺れに加えて、排尿・排便障害などの自律神経症状が現れるのが特徴です。
頻尿や尿の出づらさ、あるいは無意識のうちに尿や便を漏らしてしまうケースもあります。
また、安静にしていても激しい痛みが腕や脚に広がり、じっとしていられないような状態になることもあります。
ヘルニアの「病期」とは?
椎間板ヘルニアでは、神経がどれだけ圧迫・損傷されたかによって、体の中では様々な反応が起こります。
その代表的なものが「炎症」です。
炎症期
髄核の脱出で神経が損傷すると、体はそれを「異物侵入」や「傷」として認識し、炎症が起こります。
これは自然治癒の一環ですが、赤み(発赤)、腫れ(腫脹)、熱を持つ(熱感)、痛み(疼痛)という「炎症の4徴候」が現れます。
増殖期
炎症が収まってくると、線維芽細胞などの修復細胞が集まり、傷ついた組織を修復していく段階に入ります。
修復期
最終的には、コラーゲンなどの繊維が組織を補強し、瘢痕(はんこん:傷跡のようなもの)として修復が完了していきます。
このように、ヘルニアは時間とともに段階的に治癒へ向かっていきますが、炎症が強い時期には注意が必要です。
入浴はしても良いのか
ここから本題に入ります。
入浴が「有り」か「無し」かは、現在の症状の重さ(重症度)と、炎症の段階(病期)に大きく左右されます。
炎症が強い時期は注意が必要
入浴は、身体を温めて血流を促す効果がありますが、炎症が強い時期に温めすぎると、逆に悪化する可能性があります。
火に油を注ぐような形になり、痛みや腫れが増すことがあるのです。
特に症状が強い時は、入浴後に一時的に楽になったように感じても、数時間後や翌朝に痛みが再発・増悪することがあります。
したがって、炎症が強い場合や痛みがひどい場合には、無理に入浴することはお勧めできません。
痛みが軽い/落ち着いている場合はOK
逆に、痛みが落ち着いており、炎症期を過ぎていれば、入浴はリラックス効果や筋肉の緊張緩和につながり、むしろ回復に役立つことが多いです。
血流が良くなり、心身のストレス軽減にもつながるでしょう。
入浴時に注意したいポイント
入浴が可能な場合でも、以下の点には十分注意が必要です。
動作に注意
椎間板ヘルニアでは、姿勢を変える瞬間や体をひねる動作で痛みが悪化しやすいです。
浴槽に入る・出る、腰をかける動作などは、必ず手すりや壁を使ってゆっくりと、体に負担をかけないようにしましょう。
入浴後は冷やさない
温まった体を冷やしてしまうと、筋肉が急激に収縮し、痛みを誘発する可能性があります。
入浴後はすぐに体を拭き、部屋着や靴下を着て冷え対策を万全にしましょう。
入浴のメリットと心のケア
お風呂には、浮力によって体重が陸上の約1/10になるという利点もあります。
そのため、体にかかる負担が減り、筋肉がリラックスしやすくなります。
さらに、温かいお湯の中でのんびりと過ごすことで、ストレスの軽減や精神的な安定にもつながるのです。
お気に入りの入浴剤やリラックスできる音楽を取り入れて、自分なりの快適なバスタイムを演出するのもよいでしょう。
まとめ
椎間板ヘルニア時の入浴は、その時の症状の重さと炎症の有無によって「有り」か「無し」かが変わります。
- 強い炎症や激しい痛みがある場合 → 基本的には避ける
- 症状が軽く、炎症が落ち着いていれば → 入浴はむしろ回復を助ける
重要なのは、「今の体の状態を見極める」ことです。
そして、入浴する際は、体に負担をかけないような動作や冷え対策にも配慮しながら行うことがポイントです。
お風呂は、上手に活用すれば治癒の手助けとなる大切な時間になります。
無理をせず、自分の体と相談しながら、心地よいバスタイムを楽しんでください。