むち打ちとは

むち打ち,イメージ

これまで「むち打ちと筋肉痛の違い」や「むち打ちと打撲の違い」について触れてきましたが、今回は少し視点を変えて、「そもそも、むち打ちとはどういうものなのか?」について、より深く掘り下げてお伝えしていきます。

目次

むち打ちとはどんな状態?

「むち打ち」とは、交通事故、スポーツ中の衝突、転落事故など、強い衝撃を受けたときに発生しやすいケガの一種です。

特に、胴体と頭が前後に大きく揺さぶられるような動きが起こることで、首に過度な負担がかかってしまうことが原因となります。

これは、まさに「ムチを打つ」ようにしなる動きに似ていることから、「むち打ち」と呼ばれるようになりました。

ただし、「むち打ち」という言葉はあくまで通称であり、正式な医学的な病名ではありません。

医療機関での診断名としては、「外傷性頚部症候群」「頚椎捻挫」「頚部挫傷」などが使われます。

具体的なメカニズムは

例えば、自動車を運転中に後方から追突されたとします。人間の頭の重さはおよそ7kgほどあるため、衝突の瞬間、まず頭が前方へ強く引っ張られ、その後、急ブレーキや何かにぶつかった反動で、今度は後ろに大きく振り戻されます。

この前後の激しい揺れによって、首(頚部)には非常に大きな力がかかります。

その結果、頚椎のまわりの靭帯や筋肉、筋膜、関節包、滑膜といった組織が強く引き伸ばされたり、損傷を受けたりすることがあります。

また、それだけでなく、脊髄神経や神経が出てくる部分(神経根)にも強い引っ張りの力が加わり、神経自体が傷ついてしまうケースもあります。

どんな症状が出るのか

むち打ちの代表的な症状には以下のようなものがあります。

  • 首や肩の強いコリ感、重だるさ(筋肉痛に近い感覚)
  • 肩から腕、手の先にかけてのしびれやだるさ、力が入りにくい
  • 頭痛、めまい、耳鳴り、目の奥の痛み
  • 倦怠感や不眠、集中力の低下、記憶力の低下 など

これらの症状は、首に起こった衝撃が全身に影響を及ぼしているために起こると考えられます。

症状は時間差で出てくることが多い

むち打ちの厄介なところは、「その場ではあまり症状がなくても、時間が経ってから徐々に悪化する」という点です。

事故の直後は、「ちょっと肩が張ってるかな」「少し首が重いかも」といった軽い違和感で済んでいても、翌日や2〜3日後から症状がどんどん悪化してくることがあります。

このように時間差で症状が出る理由は、主に2つあります。

  1. アドレナリンなどの興奮物質の分泌
    事故の直後、脳はショック状態に対応するため、アドレナリンやβエンドルフィンといった興奮物質を大量に分泌します。これにより、痛みを一時的に感じにくくなるのです。
  2. 血流障害の進行
    事故直後は軽い筋膜の損傷であっても、その後、血流が悪くなることで痛みが増し、炎症が広がっていく場合があります。

レントゲンには映らないことも多い

むち打ちの診断の難しさのひとつは、レントゲン画像では異常が見つからないことが多い点です。

診断時に「ストレートネックですね」や「椎間板が薄くなっています」と言われることがありますが、それらは事故の前から存在していた可能性もあり、必ずしもむち打ちの症状と直結しているとは限りません。

実際には、むち打ちの症状が出ているとき、首や肩周りの筋肉に持続的な緊張が見られるケースがほとんどです。

触ってみると硬くこわばった状態になっており、それが長期間にわたって続くこともあります。

むち打ちは長期化することもある

交通事故など、予測できない不意打ちの衝撃は、体だけでなく心にも強いストレスを与えます。

そのため、単なる肉体的な損傷だけではなく、自律神経や精神的な部分にまで影響が及び、数か月から数年単位で症状が続いてしまうことも珍しくありません。

まとめ

むち打ちは一見すると軽いケガに思えるかもしれませんが、実際には非常に複雑で、身体全体にさまざまな不調を引き起こす可能性のある状態です。

特に、事故後すぐには症状が出にくく、時間が経ってから悪化するという特徴があるため、「たいしたことない」と放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

「むち打ち」は単なる首の痛みではありません。

神経や筋肉、自律神経にも関わる全身的な問題として、しっかりと理解し、適切な対応を心がけましょう。

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この記事を書いた人

黒木 英二のアバター 黒木 英二 柔道整復師,鍼師,灸師

国家資格:柔道整復師・鍼師・灸師
生年月日:1980年2月6日
施術経験22年以上
様々な施術法を学び、臨床に活かしています。

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