以前に「椎間板ヘルニア時の入浴について」という内容で書いたことがありますが、今回は、そこを深掘りして、ヘルニア時に湯舟に浸かるのは良いのかについてご説明していきます。
まず、ヘルニアという言葉の意味は、体の組織が本来あるべき正しい場所から逸脱して、飛び出してしまった状態を指す医学用語です。
一般的には、臓器や組織が体内の隙間や弱くなった部分を通って、本来の位置から外に脱出してしまった状態を指します。
ヘルニアはラテン語の“hernia”に由来し、“膨らみ”や“突出”を意味します。
ですので、“膨らみ”や“突出”という意味から、種類は多岐に渡ります。
- 脊椎の椎間板内の髄核が脱出した椎間板ヘルニア。
- 俗に脱腸ともいわれる足の付け根(鼠径部)の筋肉の隙間から、腸などの内臓が腹腔外に飛び出してしまった鼠径ヘルニア。
- 俗に出べそともいわれる臍ヘルニア。
- 腹腔内の孔に内臓が入り込む内ヘルニア。
- 脳の一部が頭蓋骨の隙間から脱出する脳ヘルニア。
- 胃の一部が横隔膜の食道裂孔を通って胸腔内に脱出する食道裂孔ヘルニア。
などがあります。
関連記事
ヘルニアの概要について述べましたが、ヘルニアの急性期の炎症時、つまり、局所が熱を持っていて、安静にしていても痛みが出るような時期は、熱い湯舟に浸かってしまうと炎症が悪化してしまうためおススメできません。
湯舟に浸かって効果的なのは炎症が緩和してきた慢性期や回復期になります。
状態の変化をご自身で感じていただいて、急性期から脱してきたと感じた際、初めて湯舟に浸かるときの注意点は、入浴時間は短めの5分から10分にする。
入浴前には水分を必ず摂取する。
湯舟の温度は38℃~40℃までの熱すぎない温度に設定する。熱すぎると交感神経の緊張が高まり、ヘルニアの回復に逆効果になってしまいます。
入浴姿勢に気を付ける。ヘルニアの場所や出方でそれぞれラクな姿勢が異なるため、ご自身で痛みの出ない姿勢でゆったりと浸かるようになさってください。
浴槽に入る時、出る時に痛みが出ないように足の置き位置や姿勢に気を付ける。
入浴前に脱衣所を暖めておくのと湯舟から上がって急に冷えないようにする。
これらのことに注意が必要になります。
これらのことに注意しながら、さらにおススメなのは入浴剤を入れる事です。
ミネラル分を多く含んだものがおススメです。ミネラル成分が皮膚の表面で膜を作り、熱の放出を防ぐため、湯冷めしにくく、体が温まります。
特に、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどの塩類は、保温効果を高める効果が期待できます。
エプソムソルトという硫酸マグネシウムは、筋肉痛の緩和や疲労回復に効果があると言われています。
ヘルニアによる炎症後、周囲の筋肉は緊張が高まり、硬くなっている状態ですので、これを緩和するのに効果的です。
入浴時のお湯の量は少し多めにして全身浴をする方がおススメです。
全身浴をすることで、シャワーでは得ることのできない、新陳代謝を促し、体内の老廃物や疲労物質などが体外に排出されるため、首痛、腰痛、筋肉痛などが緩和されます。
これらは、お湯に首までつかる全身浴だから起きる効果です。
頭の際まで浸かり、頭を湯舟に浮かべるように全身浴するのが格別です。
ヘルニアの痛みにより、動きが制限されたり、体軸バランスが崩れた状態が長く続いていたため、むくみやすくなっている人も多いはずです。
お湯に浸かって、お湯の水圧による「しめつけ効果」を働かせれば、むくみ解消につながります。
この効果も全身浴で発揮されます。
首までお湯につかると体重が10分の1程度になります。
この浮力作用が、重力から解放されてリラックスできる効果はヘルニアでの痛みの緩和に効果的であるのと同時に、筋肉や関節の緊張緩和効果もあります。
湯舟にゆったりと浸かり、リラックスして、英気を養うことが精神的肉体的に治療効果を高めるので、ご自身でご無理のない最大限心地いい入浴を探求してみてください。
それが回復につながることになると思います。