肘関節は、上腕骨と橈骨・尺骨という3つの骨から成る関節です。
肘を曲げたり伸ばしたり、前腕を内側や外側に捻ったりする働きがあります。
そして関節の周りの軟骨、筋肉、腱、靭帯が関節をサポートし、安定性を保っています。
肘関節だけで動くのではなく、肩関節や手関節と連動しながら働く関節です。
日常生活やスポーツなどにおいて痛める方を良く見かけます。
野球肘(上腕骨内側上顆炎)
野球肘は野球の投球動作、特に成長期の投手に多く発生する障害です。
成長途中の未熟な骨や軟骨に、過度な投球や悪いフォームでのピッチングを繰り返すことによって、肘の内側や外側、肘頭に痛みが出現します。
その中でも圧倒的に肘の内側が痛くなることが多いです。この部位を「内側上顆」といい、そこに起きる炎症のことを「上腕骨内側上顆炎」といいます。
野球だけでなく、バレーボール、ゴルフ、テニスなど、腕に負担のかかるスポーツや、力仕事など重たい物を持ち上げる反復動作時に痛みが出ることもあります。
症状としては、患部の圧痛が顕著で、肘の可動域に制限がかかり曲げ伸ばしの動きがうまくいかなくなることがあります。
軟骨に障害を受けるのは成長期の小児に多くみられ、成人では肘関節を構成する靭帯が損傷を受けることが多くなります。
まずは投球動作や負担のかかる動作を中止し休ませることで、症状の軽い初期の段階であれば、そのまま治癒していくことも期待できますが、場合によっては数か月以上投げられないこともあります。
症状の進行具合があまりにも進行していれば、手術の対象になることもありますので、早期発見早期治療が何よりも大切になっていきます。
予後も保存療法のほうが良いので、違和感や痛みがあれば早めの受診をお勧めします。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
テニス肘は、スポーツなどで手首を使った時に、肘の外側に痛みが発生するもので、「上腕骨外側上顆炎」と呼ばれています。
前腕伸筋腱の付着部(肘の外側の外側上顆というところ)に炎症を起こします。
テニスだけでなく、ゴルフ、バドミントン、剣道や、料理人などの手首を使う職業や、重たい物を持つ動きをする職業で発生します。
つまりテニス選手以外の誰であっても起こり得る障害であるといえます。
「物を繰り返し握る」「物をつかんで持ち上げる」「タオルや雑巾を絞る」など、前腕伸筋腱の付着部に繰り返しストレスがかかることで痛みが出現、または増強します。
野球肘と同様に、手を安静にすることが最も大切です。
仕事などでどうしても手を使う人は、逆の手を使ったり、痛みの出ないような動かし方で負担をかけないようにして下さい。
当院では、まずアイシングをし、早期に炎症を抑え、関節運動などのリハビリ、正しい筋肉の使い方や、自宅でできるトレーニングなどを指導していきますので、お気軽にご相談下さい。
肘部管症候群
肘の内側にある尺骨神経が慢性的に圧迫されたり牽引されることで発症する疾患です。
尺骨神経は上腕から前腕、指先にまで広く分布しています。「机の角に肘をぶつけて小指の先までしびれがきた!」なんていう経験をしたことってありますよね。
それが尺骨神経の支配領域です。
その尺骨神経が通る上腕骨内側上顆の後方にある「尺骨神経溝」というトンネルを通る際に、何らかの原因で肘部管の内圧が高まり尺骨神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こします。
原因としては、慢性的に負荷のかかる動作していたり、大工仕事など長時間酷使することで発症することが多いです。
また、柔道や野球、小児期の肘の骨折による変形(外反肘、内反肘)や、ガングリオンなどの腫瘤による圧迫でも発症することがあります。
主な症状は、初期は手の小指から薬指の外側半分までのしびれや痛みがあります。
進行すると手の筋肉が痩せて「鷲手変形」という手の変形が現れます。
これになると小指と薬指がまっすぐ伸ばせなくなり握力も低下します。
また、肘の内側をたたくと、小指と薬指の一部に痛みが響くTinel徴候(チネル)がみられます。
まずは負荷のかかる動作を辞め、安静にさせる必要があります。
進行しているものや、腫瘤などが原因で起きている肘部管症候群については手術が必要となるケースがあるので、しびれや痛みがある場合は早めに受診することをおススメします。
離断性骨軟骨炎
肘の曲げ伸ばしをスムーズに行うために、関節内の骨端部に軟骨があり、滑車の役割を担っています。
野球の投球動作やスポーツなどで同じ動作を長期間繰り返すと、軟骨が関節内ではがれ落ちてしまいます。
この状態を「離断性骨軟骨炎」と呼びます。
特に肘や膝の関節で多くみられます。成長期である小・中学生に好発し、2:1で男性が多く発症します。
発生原因は「外側型野球肘」のように、投球動作の繰り返しや、悪いフォームでの投球により、肘の外側(上腕骨小頭や橈骨頭)に外反ストレスによる圧迫力が加わり、軟骨や骨に血流障害が生じ、障害された軟骨や骨の一部が壊死し、その部位がはがれ落ちることになります。
初期では運動後の不快感や鈍痛以外に特に症状はみられません。
軟骨下骨のはがれ具合や、変性の進行とともに痛みが強くなります。
軟骨が完全にはがれ落ちて関節に遊離すると、肘の曲げ伸ばしの際に引っかかり感やズレが生じ、関節に遊離物が挟まってしまうことを「関節ねずみ」といい、肘がロックして動かなくなってしまいます。(ロッキング)
ロッキングを起こすようになってしまうと、手術が必要となってしまいます。
当院では、初期であれば運動を中止し、肘を安静にさせると共に、動きを悪くさせている筋肉にアプローチするだけでなく、脊柱・骨盤など投球動作を不良にしている部位をみつけ、施術し柔軟性を高めていくことで肘にかかる負担を減らしていきます。
出来る限り早期に治療を始めることで予後が違っていくので、違和感がありましたらまずはご相談下さい。
肘内障
肘内障とは、俗にいう「肘が抜けた」状態のことをいいます。
親と手を繋いでいる子供の手を急に強く引っ張ることで起こる肘の関節の亜脱臼の状態です。
1歳~5歳ぐらいまでの幼児に起こりやすく、腕を引っ張られて起こるだけでなく、転倒や捻ったりすることでも生じます。
幼児はすぐに泣き出したり、痛みを訴えて腕を使わなくなります。
とても痛がり腕を下に垂らしたまま動かそうとはしませんが、腫れや腕の形が変形したりすることはありません。
肘内障は腕を強く引っ張られた際に、肘関節の橈骨と尺骨をつなぐ輪状靭帯という靭帯が橈骨頭からはずれて関節内に挟み込まれることで起こります。
整復は比較的容易ですが、骨折など他の怪我の疑いもあるため、できるだけ早く当院のような整骨院や整形外科に受診するようにして下さい。
肘内障が治ったあとも、しばらくの間は再発しやすいため、激しい遊びや手を引くようなことは控えてあげて下さい。
上腕骨顆上骨折
転んだ際に手をついたり、高い所から転落して肘が反る(過伸展)ことで骨折します。
主に3歳~8歳ぐらいの小児に生じる骨折で、小児の肘のまわりの骨折の中で最も発生頻度の高い骨折です。
小児の上腕骨顆上部は、骨の表面の骨皮質が薄く大人に比べると骨が細いため、そこに強い外力が集中することで折れてしまうのです。
成人であっても交通事故やスポーツなどで生じることがあります。
上腕骨顆上骨折では神経や血管を損傷してしまう可能性があるほか、適切な処置を怠ると、肘が変形したまま癒合してしまうこともあります。
受傷後肘に強い痛みと腫れが生じ、骨折部に変形や内出血が現れます。
骨折による腫れが強い場合、局所の循環障害を起こして前腕への血流が障害されるために、指が変形して固まってしまう「フォルクマン拘縮」を合併する可能性があるため、適切な治療を早期に行う必要があります。
また、正常なポジションに整復しないまま治癒してしまうと、前腕が内向きに曲がった「内反肘」という変形して、肘関節の動きが制限されてしまいます。
このような変形には尺骨神経の障害も合併することがあります。
軽度の骨折の場合3~4週間のギブス固定で患部を安静に保ち、経過観察を行います。血管損傷があったり、変形が強いなどの重傷例では手術が必要となります。
固定中であっても、患部の循環を促していくことが早期治癒につながっていくので、当院では手指を動かすリハビリトレーニングなどを行っています。
まずは、芦屋市のくろき鍼灸整骨院までご連絡下さい。