腰の痛みの治療

腰痛というのは実質的には症状名です。便宜上、「急性腰痛症」とか言う病名が使用されることはありますが、病名ではありません。 もっとも一般的に認識されている腰痛疾患として「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」が挙げられるでしょう。「ぎっくり腰」も正確な病名ではなく、病名をつけるとすると先に出た「急性腰痛症」となります。
さて、腰痛の原因ですが、腰痛というものは、実に様々な原因で生じます。そのため、原因部位の特定は困難な事が多いのです。その理由の1つとして、腰椎(脊椎)は深部組織です。背骨は身体の後ろ側にあると思っている方も多いかも知れませんが、椎体という背骨の本体の部分は、実は身体の中心にあります。断層撮影などで見てみるとよく分かります。このように背骨は深部にあるため、脳で認識された痛みの部位が正確な部位を示すわけではありません。これを関連痛とか、内臓痛と言います。そのため、腰のある部分が痛いと言っても、その局所に病変があるわけではないことが多いのです。また、レントゲンでは年齢とともに椎間板の高さや椎体の形状に変化が出てきます。これらが痛みの原因になることもあれば、そうでないこともあります。この事実が原因同定をより困難なものにしているのです。
また、背骨は早ければ10代後半から老化が始まると言われています。これは変性と言って、椎間板であればクッション性がなくなっていくことです。これは2足歩行を始めたときからヒトに課された宿命と言っていいでしょう。生涯腰痛を経験しない人は10人中、1,2人と言われています。また、2人に1人は今現在、腰痛を感じているとも言われます。それほど頻度の高い症状ですが、それだけに原因も複雑になってくるのです。腰痛の原因として、主に、前方要素によるもの、後方要素によるもの、として大きく分類することが出来ます。簡単な見分け方として、前屈みになると痛みが増強すると前方要素、腰を後ろにそらすと痛みが強くなると後方要素の障害と考えられます。どちらでも痛い場合もあったり、100%当てはまるというものではありませんが、一応の目安になります。ここではぎっくり腰と前方要素(椎間板の障害)によるものについて説明します。
また、腰椎は上半身と下半身をつなぐ唯一の骨格ですから、上半身と下半身の動きに際して、すべての負荷が腰椎にかかります。重心線が腰椎を通っていると負荷は体重分の100%ですむのですが、重心線がずれるとモーメントアームが長くなるので、腰椎に対する負荷が増加します。まっすぐに立っているときの腰椎の負荷を1とすると、前屈みになることで腰椎にかかる負荷は1.5倍になります。また、これはイスに腰掛けているときとほぼ同じ負荷になりますので、実は座っているときの方が立っているときよりも腰椎にかかる負荷は大きいのです。イスに腰掛けて前屈みになると2倍近くの負荷になります。前屈みで荷物を持つと更に負荷が増えることは容易に想像できます。腰椎の前方を支えているのは椎間板です。このようにして、負荷がかかったときに椎間板が破綻してぎっくり腰や椎間板ヘルニアが生じるのです。ですから、予防には姿勢が重要なのです。 通常はものを持った拍子に、とか、身体を捻ってから、とか言うきっかけがあることが多いですが、くしゃみやちょっとした動作で生じることもあります。転倒や転落など、大きなけがが起因となることもあります。また、足のしびれなどの神経障害を伴う場合もあります。 この痛みの原因は何なのかと言うと、色々な原因があります。最も多いのが椎間板によるものです。椎間板の周囲にある線維輪という組織が年齢とともにもろくなってきます。ここには神経繊維が豊富に存在しているため、線維輪が傷むとその瞬間から激痛が生じます。これがぎっくり腰となるのです。くしゃみなど、腹圧が瞬間的に高まったときにも髄核の圧が高まり、線維輪が損傷されることがあります。また、椎間関節という部分でも障害が起きると瞬間的に激痛を生じ、ぎっくり腰となることがあります。このような腰痛は通常、数日のうちに施術により、ほぼ元の状態まで回復します。コルセットの目的は腰部の支持の補助と腹圧の補助です。筋力回復には不利であるという場合もありますが、急性期には適用するべきでしょう。ぎっくり腰は椎間板ヘルニアの初期症状であることがありますので、注意が必要です。また、骨が病的に弱くなっていると(骨粗鬆症、骨腫瘍など)、ちょっとしたことで骨折を起こし、一見ぎっくり腰のような症状を来すことがあります。このような場合にはなぜ骨が弱くなっているのかを精密検査して調べる必要があります。

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、椎骨の間にあるクッションの役割を果たす椎間板が飛び出した状態です。椎間板とは線維輪という硬い外枠と、その内側にあるゼリー状の髄核という部分から成り立っています。クッションの役割を担っているのはこの髄核であり、これは20歳を過ぎた時点から水分含有量が徐々に低下し、そのクッション性をなくしていきます(変性と言います)。それと同時に線維輪ももろくなり始め、ひび割れが入ったりしてきます。線維輪と椎骨は終板軟骨という軟骨を介してつながっており、椎骨・椎間板・椎骨という背骨の機能単位を形成します。髄核には神経は通っていないため、痛みを感じることはないとされますが、線維輪と終板には神経線維があり、損傷すると痛みを感じます。
重いものを持ったとき、くしゃみをしたとき、などには椎間板に強い圧力がかかります。この時に線維輪にひび割れが生じると激痛を生じることがあり、いわゆるぎっくり腰として出現することがあります。ひどい腰痛が数日で治まってから、次第に足がしびれ痛くなってくる、と言うのが椎間板ヘルニアの典型的な症状推移です。急激な腰痛発作の前に前兆のような腰痛があることがあります。
上述のように、椎間板は20歳を過ぎたときから変性が始まっています。すなわち、このころからクッションの役割は低下し始め、線維輪も弱まってくるため、椎間板は徐々に飛び出してきます。この椎間板の飛び出しは、腰痛のあるなしに関わらず、一定の割合で見られると言われています。すなわち、MRIなどで見つかる椎間板の飛び出しと腰痛・神経痛とは必ずしも関連性があるとは言えないと言われています。しかし、椎間板の状態によっては痛みの原因となっていることも事実です(このような状態を椎間板症と言います)。従って、この椎間板の飛び出しが病的意義を持っているかどうかは症状と画像所見との整合性によって判断されるものであり、MRIだけを見て「椎間板が飛び出しているから、椎間板ヘルニア」、と言うように診断するのは不適当とされます。
ヘルニアの好発部位は第4腰椎と第5腰椎の間か、第5腰椎と仙椎の間です。この部位でヘルニアが生じると、いわゆる坐骨神経痛を生じることがほとんどです。好発年齢は基本的に若年者であり、早ければ10歳代に見られることもあります。40代以降になると、突出した椎間板そのものによる症状と言うよりも椎体や椎間関節の変性による症状が主体となります(変形性脊椎症、椎間関節症)。MRI上は両者はよく似た画像所見や症状を示すため、よく混同されていますが、厳密には椎間板ヘルニアと区別されます。
治療は、以前は手術療法が主体でしたが、ここ10年ほどで考え方が変わりつつあり、手術をしない方向になってきています。その根拠とされるものとして、手術治療したものと手術せずに治療したものの10年後の症状を比較したところ、両者に大きな差はなかったというデータがあります。また、飛び出た椎間板はその飛び出し方が大きいほど、時間経過とともに小さくなっていくと言うデータも示されました。ヘルニアには自然治癒するものがある事が分かったのです。そのため、手術治療は「痛みが強く、社会的に早期改善を強く望む」場合や、「膀胱直腸障害や中等度以上の神経麻痺がある」場合などに限定されつつあります。手術も以前のように「骨を削って、椎間板を全部切除する」ものから、「骨をほとんど削らず、顕微鏡などを用いて飛び出た髄核のみを摘出する」と言った方法や「切らずにレーザーで髄核の体積を減らす」というようなものもあります。これらの方法には再発率や有効度など、一長一短があります。
手術をしない場合、椎間板ヘルニアの症状が消退するのにかかる期間は数週から数ヶ月程度と言われています。その期間、施術を早期から行い、運動療法などをていくことで早期改善と再発の予防に繋がります。

椎間板症

通常、椎間板ヘルニアと診断するときには、神経刺激症状と言って、足にしびれや痛みを伴っていることが基本です。画像上、椎間板の突出があるからと言ってヘルニアと診断するのではなく、神経症状との合致が必要です。神経症状を伴わないが、おそらくは椎間板による痛みが生じているのだろう、と判断される場合には、画像上のみの椎間板ヘルニアと病的意義を持った椎間板ヘルニアとを区別するために、「椎間板症」という病名をつけることがあります。症状は腰痛のこともありますが、多くは臀部付近の痛みとして現れることが多いようです。
成長期に見られる椎間板症として、終板障害と呼ばれるものがありますが、これは成長期の腰痛で紹介します。終板障害の遺残としてシュモール結節と呼ばれるものがあります。椎間板の圧力により、線維輪が割れるかわりに終板がへこんだ状態です。これも腰痛の原因と考えられます。
ここからは主に腰を後ろにそらすと痛むが強くなることの多い、後方要素の障害によって起こる腰痛について解説します

筋筋膜性腰痛症

脊椎の両側に傍脊柱筋と呼ばれる筋群があります。主に脊椎の指示を担っているものですが、これらの筋群に疲労を来すと腰痛の原因になります。肩こりと同様の機序です。後方要素ではありますがこれは後屈で痛みが増強するとは限りません。
本来腰椎には生理的前彎と言って、横から見ると少し前方凸にカーブしています。この腰椎の生理的前彎というものは四足歩行動物にはありません。4本足で歩いている状態では股関節は体幹(脊椎)に対して前方(下方)に伸びていますが、2本足で歩く場合、下肢は体幹に対してその延長線上にある必要があります。4足歩行の状態から2本足で立とうとすると股関節が完全に伸びきらない状態では、骨盤を傾け、腰椎を前方に突出させる(腰をそらす)事で後ろ足(下肢)を体幹に対して下方に向けることが可能となります。また、腰椎が骨盤の後方にあるため、骨盤を垂直にしてしまうと、重心は後方に偏ってしまいます。そのため、骨盤を傾け、重心を前方に持ってきてあるのです。こういった生物進化上、直立二足歩行に対して解決し切れていない構造上の問題点をはらんでいるため、ヒトに見られる腰椎の生理的前彎は生じたものと考えられます。すなわち、現代の人類が二本足で歩く以上、生理的前彎は構造上必要な物なのです。
腰椎の前方は腹筋と腰筋という筋群で、後方は傍脊柱筋群でバランスよく腰椎を前彎させて支えているのです。前屈みの姿勢や座位を長時間取っていると、この腰椎の前彎が減少した状態で体重を支える必要が出てきます。そうすると、後方の傍脊柱筋群が過剰に働く必要が出てくるのです。こうして、筋疲労が生じ、筋肉がこわばり、痛みを引き起こすのです。これが筋筋膜性腰痛と考えられます。筋肉に硬結を触れることもあり、筋肉に圧痛があります。
一旦症状が生じると肩こりと同様、筋のこわばりのための循環不良が生じ、痛みが起こる、痛みのために筋がこわばり・・・と言うふうに悪循環となります。これを痛みの悪循環と言います。施術により、この悪循環を断ち、原因となる動作を避けることが重要です。また、腹筋や腰筋など、前方の筋群の筋力低下が生じていることもあり、このような場合にはこれらの筋力訓練が再発予防に有効です。

変形性脊椎症

年齢とともに椎間板が変性し、クッションの役割を果たせなくなると、椎骨そのものが接触面積を増大させようとして形態変化を起こします。その結果、骨に色々な程度の出っ張りが生じます。これを骨棘(こつきょく)といい、この変化を生じた状態を「変形性脊椎症」と言います。骨棘は脊椎に限らず、骨が荷重を受ける部分に、荷重方向と垂直方向に発生します(代表的なものは膝の変形性関節症です)。ただ、骨棘の形成はある程度の年齢になれば症状のあるなしにかかわらず、ほぼ100%の確率で見られる変化(経年性変化と言います)であることには注意が必要です。ただでさえクッション性が悪く、動きがスムーズに行かなくなっているところに、骨棘が出来るとさらに動きが悪くなることがあります。また、骨棘が周辺の靭帯や神経を刺激して腰痛を生じることがあります。典型的には起床後に症状が強いことが多いようです。

腰部脊柱管狭窄症

特殊な状況を除き、基本的には高齢な方に多い疾患です。症状的には椎間板ヘルニアと類似していることもありますが、正確に言うと椎間板ヘルニアではありません。椎間板ヘルニアは飛び出た椎間板が周辺の神経を刺激して痛みを引き起こすものですが、中高年になってくると、椎間板の強度そのものが弱くなり、それ自体が神経を強く圧迫するほどの力がなくなってきます。変わりに骨の形態変化を生じ始め、変形性脊椎症の状態になります。腰痛は伴わないこともあります。椎体の後ろには脊柱管と言って、足に行く神経が束になって通っているところがあります。椎体や椎間関節の骨棘や、周辺の靭帯の肥厚によってこの通路が狭くなります。そうなると神経が機械的に押さえ込まれたりして、神経が直接障害される、あるいは神経が血流不足になり、しびれや痛みを生じる、と言う状態になります。これが脊柱管狭窄というもので、通常は坐骨神経痛を来します。 典型的な腰部脊柱管狭窄の症状として、間歇性跛行と言うものがあります。これは普段は特に痛みはないが、一定の距離や時間を歩くと足がしびれだすと言うものです。脊柱管狭窄に特徴的な事として、足が痛くなってきたとき、しゃがんだり、座ったりして休むと速やかに足の痛みが取れるというものです。これは歩行時には背骨が伸びていますが、座ると背骨が少し前屈みになります。前屈みの姿勢では脊柱管が広くなり、神経の圧迫が開放されて速やかに症状が改善するというわけです。こういった人たちは腰をかがめた姿勢での運動、特に自転車などであれば幾ら続けていても足が痛くならないと言うのが特徴です。
類似の症状として、同様に歩行時に足がしびれ痛くなるのですが、前屈みですぐに改善しないと言う場合があります。これは通常、足の血流障害が主体であるとされ、閉塞性動脈硬化症などの疾患との鑑別になるとされています。脊柱管狭窄と合併していることも多く、同時に治療されることもあります。血流障害が主体の時には、脊柱管狭窄のように前屈姿勢や自転車運動では症状が出現しにくいと言う事はありません。痛みは下肢全体と言うよりもふくらはぎのあたりを中心とした症状が強いことが多いようです。

椎間関節症

症状的には変形性脊椎症と同じですが、症状の主体が椎間関節にあるであろうと診断される場合にこの病名がつきます。椎間関節とは椎骨の連結を後方で、になっている関節で通常の関節と同様、関節軟骨を有しています。膝などの関節軟骨が減るのと同様、椎間関節にも同じ変化が生じます。腰痛が主体ですが、骨棘が出来て、周辺の神経を刺激すると神経痛を引き起こします。
主な症状は腰痛ですが、おしりから太ももにかけて痛みが出ることがあります。ふくらはぎや足先まで症状が出ることは余りありません。変形性関節症と同様、主に動き始めに痛みが強く、スポーツ選手などの若年者に見られることもあります。

腰椎分離症

腰椎の後方要素の椎弓という部分の連続性が断たれてしまった状態です。スポーツ障害として現れることも多いです。

腰椎すべり症

大きく変性すべりと分離すべりに分けられます。分離すべりは上記の分離症が進行した状態で、変性すべりとは分離のないすべり症のことを指します。ここでは変性すべりについて説明します。 ほとんどは前方すべりという、上位腰椎が下位腰椎に対して前方にずれるものです。椎間板の変性による症状が強いのですが、すべりが高度になると後方にある神経を圧迫し始めますので、神経痛が生じます。コルセットなどを併用して腰痛に準じた施術を行いますが、症状が大変強い場合には手術が選択されます。手術は固定術と言って、金属のネジなどを用いて、すべりをある程度戻した位置で固定し、それ以上の動きが出ないようにするものです。
ここでは後方障害、前方障害と分類できないようなものを紹介します。

骨粗鬆症

かなり有名になった言葉ですが、多少の誤解があります。まず、骨粗鬆症は絶対的な数値で決めるものではありません。年齢とともに骨量は低下していきますので、高齢者の平均値(正常範囲)は当然、若年者の平均値を下回ります。現時点では、骨折の危険性が生じてくるのは成人の平均値の約80%以下になったときとされており、このあたりから治療対称とすべきかどうかがを他の症状とともに総合的に判断するようになっています。 骨粗鬆症による腰痛の典型は圧迫骨折です。急性であれば比較的強い腰痛を生じます。はっきりとした外傷なく発生することもあるのが特徴です。MRIを行えば潜在性の圧迫骨折があるのかどうかが判定できます。また、骨折がなくても腰痛を生じることがあるとされています。これは骨強度が弱いために、画像上捉えることができないような、小さな骨折(顕微鏡的骨折と言います)を生じているのではないかと考えられており、骨粗鬆症の治療を開始すると腰痛が改善することがあります。
また、すでに治癒したものでも、圧迫骨折の為に椎体に変形を来していると、後彎変形と言って後方凸の状態になります。高度になると、円背といって、背中が丸くなってしまいます。こうなると、傍脊柱筋の負担が強くなり、腰痛の原因となることがあります。お年寄りの背中が曲がっているのは姿勢が悪いのではなく、圧迫骨折が存在し、背骨が変形しているために起こっているものもあります。圧迫骨折が後方の神経を押さえると下肢の麻痺が生じることがあります。これは受傷後早期に起こるとは限らず、数ヶ月の経過を経てから発生することもあります(遅発性麻痺)。 骨粗鬆の予防としてよくカルシウムを取ることが強調されていますが、カルシウムを取るだけでは骨量は増えません。骨という組織は絶えず造り替えられています。不可にさらされない骨は幾らカルシウムをとっても強度は落ちていくのです。無重力空間に行った宇宙飛行士が地球に帰還すると高度の骨粗鬆症になっているという話は有名なことです。ですから、骨量改善には適度な運動が不可欠なのです。また、カルシウムを吸収するためにはビタミンDが必要です。このビタミンDもただ摂取するだけでは有効ではなく、活性型ビタミンDである必要があります。通常の食物中のビタミンDを活性化する最も簡単な方法は日光に当たることです。ですから、骨量維持にはカルシウム摂取とビタミンD摂取、そしてお日様の元での適度な運動が必要なのです。 近年、骨量が十分なのに骨折を来しやすい人がいることが判明してきています。これは骨量測定が骨折のしやすさを正確に反映していないと言うことです。最近では骨量に取って代わる、骨折のしやすさをより正確に反映した検査方法と言うものが研究されつつあります。現時点では骨量測定がもっとも実用的ではありますが、その数値に一喜一憂することなく、適度な運動と、バランスよい食事を心がけて心身共に健康な生活を心がけていく事が大切だと思います。

化膿性脊椎炎

何らかの原因で背骨や椎間板に細菌が感染し、化膿してしまった状態のことです。典型的には強い腰痛に発熱を伴います。初期にはレントゲンで異常像がつかめないときもありますが、時間が経過すると骨が溶けてきたりしてレントゲンで異常像が現れ始めます。一般的にはブドウ球菌と言って、皮膚などに常在する菌が原因ですが、結核によるものも後を絶ちません。結核によるものを特に脊椎カリエスと呼びます。結核の場合、高熱が出ることは少なく、微熱と腰痛が続く事があります。通常の腰痛と違うところは痛みが強く、安静時痛(じっとしていてもずきずき痛む)が特に強いことです。また、糖尿病など、感染しやすい全身状態の場合に起こりやすくなります。このような場合には精密検査を受けましょう。 治療は基本的には投薬(通常は抗生物質の点滴投与)となりますが、神経麻痺(足や手に力が入らなくなる)を伴う場合や薬が無効の場合、手術が選択されることもあります。

脊椎の腫瘍

脊椎に腫瘍が発生することは比較的まれですが、ヘルニアと思っていたら神経に出来た腫瘍が原因で神経痛を引き起こしていた、と言うこともまれにあります。また、類骨骨腫という良性腫瘍は脊椎に出来ることがあります。これも典型的には自発痛(じっとしていてもずきずき痛む)を伴います。
脊椎原発で悪性腫瘍が発生することはかなりまれです。悪性腫瘍がある場合は通常、ガンの転移です。健康診断でも特に異常を指摘されてなくても脊椎の転移でガンが見つかった、と言う例もあります。
こういった特殊な腰痛によくみられる特徴は、安静時痛や夜間痛(昼よりも夜に痛み)が強いと言うことです。通常の腰痛は寝たり背中を丸めることで多少改善し、体を動かした時や、動かしはじめに痛みます。じっとしていてもじーんと痛むことはありますが、ズキズキ痛んだり痛みのために目が覚めると言うほどのことはあまりありません。もちろん、このような腰痛があっても特別な原因のないのことのほうが多いのですが、このような腰痛がある場合には一度MRIなどの精密検査を受けておきましょう。

身体化障害による腰痛

腰痛、特に慢性腰痛には、上述のような器質的障害(解剖学的に破綻を来し、客観的に異常があると思われる状態)のない場合がよくあることが知られています。これには種々の社会的要因も関与しているとされていますが、身体化障害といって、ストレスなどの心的要因によって体調に不調を来すものです。もっとも典型的なものでは、症状が多彩で多岐にわたっており、腰痛や四肢の痛みの他、消化器症状なども伴います。また、しびれや麻痺といった症状を来すことが多いのですが、神経の分布に一致せず、症状と客観的所見の整合性に乏しいことが多いものです。いわゆる詐病との違いはこれらの症状が非意図的であることとされます。このような場合には心的障害の原因を認識することが大切ですが、セロトニン製剤や抗うつ薬などの安定剤が有効なことがあります。典型的な場合でなくても慢性腰痛にはこれらの薬剤が有効なことがよくあります。